2006年01月23日

永遠のマリア・カラス CALLAS FOREVER

永遠のマリアカラス CALLAS FOREVER
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今、フランコ・ゼッフィレッリの自伝を読んでおり、とにかく面白いので早くこの本を紹介したいのですが、その前にちょうどいいタイミングでTV放映されたので、2回目鑑賞。本来アメリカ映画として製作することで話が進行していたそうですが、そうすると、ジャクリーン・ケネディを出さないといけないので、ゴシップ裏話映画になってしまう。それを拒否するとヨーロッパで作るしかなかったとゼフィレッリは言っていましたね。

観客の熱狂的な支持を得た日本公演の出来がひどかったと、カラスが自分を責めるというエピソードから映画は始まる。これって外国人アーティストを盲目的に賞賛する日本人をパロってるのかな、と見ていてあまり気分がよくなかったのだけど、自らの最高の到達点を知るからこそ、現状のひどさに我慢がならなかった、天才の苦悩と孤独を表わすエピソードでもある。そして、それがそのままこの映画のテーマである。

Callas-Forever.jpg

この映画はフィクションだ。この映画の私にとっての最大の謎というのは、カラスと親しかったゼッフィレッリが、どうして自分がみたマリアカラスをそのまま描くのではなく、このような話を「創作」したのかということです。
ゼッフィレッリはカラスを知りすぎているから、カラスがオナシスに利用され、無残に捨てられたという友人の屈辱の場面を描けなかったのかもしれない。
実際のところ、カラスはオナシスとの恋愛におぼれて芸術家としての日々の鍛錬を怠ってしまったことは事実です。というより、オナシスと結婚して声楽家としては引退するつもりだった。だからもう練習する必要などないと自分で見切りをつけていたようです。しかし、オナシスはジャクリーヌと結婚しました。カラスが我に返り、ふたたびオペラの世界に戻ろうと思ったときはすでに声が出なくなっていた。一度でなくなった声は二度と戻ることはありませんでした。(それにしてもあれだけの声楽家があんなにタバコをふかすのだろうか・・・)


この映画はフィクションではありますが、プロモーターがカラス主演の映画を作ろうとするというエピソードは、ゼッフィレッリが「トスカ」をマリア・カラス主演で映画化しようとして実現しなかった実話を元にしていると思われる。
私が、この映画にどうしても納得いかなかったのは、プロモーターという中途半端な設定にせず、映画監督にすればよかったのにということだ。
ジェレミー・アイアンズ=ゼッフィレッリですから、カミングアウト映画と言ってもいいのですかねえ。主役はカラスのはずなのに、妙にアイアンズのキャラクターが「たってる」。カラスが主人公とおもいきや、アイアンズからの視点になったりするので焦点がブレましたね。
残念でなりません。「カルメン」の演出なんてゴージャスでゼッフィレッリの真骨頂発揮だったので、なおさら残念です。

話を戻して「トスカ」の映画化の件ですが、そのときはカラスはまだオナシスとつきあっており、破局が近づいていた時期だった。その映画化にオナシスがお金を出すと約束したが、実際はほんのわずかの額しか出さず、カラスを一度その気にさせて、無残に捨てるギリシャの暴君そのものの仕打ちをして、カラスを捨てようとしていた時期だったようです。また、オナシスと別れた後、パリで隠遁生活を送っていたカラスに、ゼッフィレッリは何度か舞台への復帰を呼びかけたりしたのだが、たえず拒否されたことも事実。
本作は、もしそのときカラスがYESといってくれたなら、、、、という作品です。
実際のところカラスの世間一般のイメージは、全盛期の素晴らしいカラスや、映画に出てくるような誇り高いカラスというイメージよりも、恋にも破れ、歌姫としても盛りを過ぎて人間嫌いになって引きこもった孤独な女性というのが、世間の彼女に対するイメージだったのではないでしょうか。

そう、この映画は、そんなカラスではなく、偉大なカラスを後世に伝えるためにゼッフィレッリが執念で作った映画なのではないでしょうか?

ではなぜ、ゼッフィレッリがカラスをそれだけ敬ったのか。もちろん不世出のディーバであることはもちろんですが、
実は人間としてのカラスの素敵さを言いたいがために、ゼッフィレッリはこの映画をとったのだと思います。

それを示すエピソードが自伝に書かれています。ちょっと長いのですが、最後に引用します。

callasforever1.jpg

1955年、ゼッフィレッリの演出で「イタリアのトルコ人」の舞台に立ったとき、ゼッフィレッリの父親が舞台を見に来た。
すでに車椅子で歩けない父親が息子の晴れ姿を見に来たのだ。

舞台終了後、父をマリアに引き合わせようと、私は客席から舞台までの骨の折れる道のりを彼の手を引いて歩き始めた。
私はマリアの元にいき、「お願いだ、マリア、父を連れてこなくちゃ。あなたに会いに来てるんだ」
「あなたのお父様が?歩けないんじゃなかったの?」
そういうと彼女は人々の群れを残して楽屋から飛び出した。舞台衣装のまま、美しい髪をなびかせて。
マリアは父がステッキにすがって立っている舞台に上がり父親のもとへやってきた。
マリアが伸ばした手に、父は身をかがめて口付けし、彼女を深く膝を折った。
「いらしていただいて、本当に嬉しいですわ」
彼女は父の腕をしっかりつかみ、歩行を助けながら言った。
「私たち、みな息子さんを愛してます。本当に才能があるんですもの、でもときどきとても忘れっぽいんです」
彼女が父を楽屋まで連れて行くには、20分間奮闘しなくてはならかった。
一足ごとに、マリアはこんな難しい息子を育ててきたのだから、あなたは本当に素晴らしい人に違いないと話しかけ、父は誇らしさに顔を紅潮させた。
私はゆっくりとふたりに連れ添い、彼女に深く感謝した。

その後マリアとケンカすることがあると、私はいつも引き下がり、何でも許すと彼女に言った。
「あなたの心を知っているからね」私はいつもいった。
「悪女のふりをしてるけど、決してそうじゃないことはわかってるんだ」


callasforeverpic.jpgカラスはど近眼。めがねをはずして舞台に立ってるときは何も見えていなかったが、極度のアガリ症のため、それが逆によかったという。







この記事へのコメント
TB、コメントありがとうございます。私もTBさせていただきました。
イタリア映画一筋?すごいですね。奥が深い。じっくり読ませて頂きますね。私もイタリアは好きですが。フランコ・ゼッフィレッリの自伝いつか読みたいです。
Posted by itti5 at 2006年01月23日 16:34
すみませぬ。HPアドレス書き間違えて訂正したつもりで、二重投稿してしまい・・・
Posted by itti5 at 2006年01月23日 16:37
TBありがとうございます!

ゼッフィレッリとカラスの間にはそんなエピソードがあったのですね。そう思って観て見るとまたひと味違う映画に観えるのかも…フランコ・ゼッフィレッリの自伝も読んでみたいと思います。
Posted by porofox at 2006年01月23日 23:17
こんばんは☆彡
TBありがとうございます。
こちらからもTBさせて頂きました!
映画の中のカルメンの演出は本当に素敵でしたよね。
あれが本当にカラスで実現していたら良かったのに、、と残念でなりません。
Posted by えみり at 2006年01月23日 23:31
TBありがとうございます。こちらからもさせて頂きました。
イタリア映画は私も大好きですので、今度じっくり読ませていただこうと思います。
ゼッフィレッリの自伝も興味が湧きました。
Posted by ゆう at 2006年01月24日 11:26
コメント&TBありがとうございました。
カラスのことをそんなに詳しくは知らないので、勉強になりましたー。
Posted by 詩夜 at 2006年01月24日 11:47
TBありがとうございました。イタリア映画お好きなんですね!よかったらまた遊びにきてください。
Posted by agathe at 2006年01月25日 06:45
みなさま、グレーでフォントも小さくて読みにくいにもかかわらず。コメントありがとうございます。
長くなりますので、まとめてレスいたします。

itti5さま、porofoxさま、ゆうさま
そのうち、自伝のほかの面白い話も書きますのでお待ちください。

えみりさま、詩夜さま、
実はこんなに書いておいて私もオペラについては知識がないので、これからそちらにも趣味をひろげたいなあと思ってます。

agatheさま
イタリア映画だけでなく、他の映画もみてますけど、このブログではイタリア映画のみで頑張ってます。


Posted by マヤ at 2006年01月26日 22:19
映画「永遠のマリアカラス」はまだ観ていないのですが、まやさんや他の方の記事を読んで早く見てみたいなぁ〜って思いました。

でも、私が思っていた感じの映画ではないみたいで・・・それはそれで興味深いです。

TBありがとうございました。
Posted by Bathspa at 2006年04月07日 13:38
Bathspaさん、コメントありがとうございます。

私が思っていた感じの映画ではないみたいで・・・・

まだご覧になっていないのですね、見たら是非感想聞かせてくださいね。
Posted by マヤ at 2006年04月11日 16:44
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