2006年02月12日

2 月18日から公開『ルー・サロメ 善悪の彼岸 ノーカット版』

『ルー・サロメ 善悪の彼岸 ノーカット版』

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オリジナルは1977年製作にもかかわらず、日本公開は1985年だった本作。だが、日本公開バージョンはオリジナルではなく、40箇所以上のシーンがカットされた英語版だった。

今回、私たちが観ることができなかったそのオリジナルイタリア語ノーカット版が公開される。なんとも嬉しいことであるし、製作からなんと30年近くたっていることに驚かされます。

85年の日本公開時のタイトルは『善悪の彼岸』だったという。この邦題、実は気に入らないのだけども、「善悪の彼岸」という言葉自体は響きも哲学的な感じもいいですね。

なぜ気に入らないのかというと「善悪の彼岸」という言葉そのものは、この映画には全く何の関係もないからです。ルーサロメと恋愛関係になるニーチェが出てくるから、そのニーチェの著作から日本人がよく知っている言葉をとっただけです。それだけ。

この映画はやはり大人になってから観ないといけない映画ですねえ。もし10年前に観ていても全くもって理解できなかった気がします。
こういう大人による、大人の、大人のための映画、最近ないなあ。
久々に酔ったなあ。映画にではなく、この映画を堪能しちゃってる自分に。

なーんつて。


この映画のルーサロメを観ながら、私はフランス映画『年下のひと』でジュリエット・ビノシュが演じた女流作家ジョルジュ・サンドを思い出しました。
女性も家庭に縛られず自由意志で生きる、まさにモダンウーマンの走りであり、美貌も兼ね備え、男性たちからも愛され、称えられたミューズ。

『年下のひと』も以前レビューを書いた『復活』もほぼ同じ時代、19世紀末から20世紀初頭にかけての話です。

これらの3つの映画に共通するのは、女性が強くなったということですね。

ただ、ですね、リリアーナ・カヴァーニはルーのカリスマにはあまり興味がなかったのかなあと、考えざるをえなかった。なぜ、彼女が多くの男性からそれほど強く愛されたのか、肝心の会話などからはその知性が汲み取れませんでした。

それにルーよりも、彼女をとりまく男性たちの同性愛趣向ばかり念入りに映像にしているようにも思えたのです。

特に、ニーチェの気が狂う前にみる幻影「神と悪魔の踊り」が完全復活。二人の男性ダンサーがほとんど裸に近い格好で妖しい、はっきりいっておぞましい舞踊を踊ります。

これだけでなく、今回完全復活したシーンはどれもセクシャルなシーンなので、そういうシーンのインパクトが強すぎ、一番大事な「なぜルーがそれほど男性たちをとりこにしたのか」が逆に弱くなってしまったのではないか、とすら思いました。

ただ、今回のバージョンがオリジナルですからね。
ヴィスコンティの場合、自らゲイであったけれども、映画でここまであけすけに男性たちの交わりを描いたりしなかった。
なのに、女性監督カバーニは、どうしてここまで男性の肉体の交わりに固執するんでしょうか。

ローマの古代遺跡で男性たちが乱交を繰り広げる場面なども、今回復活したシーンですが、別になくてもよかったように思います。
が、ルーを愛したパウル・レーがこの乱交場面をみて、ルーに求婚します。ということは、男性が女性ルーにではなく、ルーに男性を見ていたのではないかという解釈が成り立ちますね。
(実際、ラストにそれを裏付けるセリフがある)


こういう才知と美貌を兼ね備えた女性が、近い将来男性を無力にしてしまうのではないか
という危機感がニーチェを狂気に走らせたという話なら、なかなか面白い解釈だとは思うけど、
その辺のつながりがなく、ニーチェがどうして狂気に走るのか?がよくわかりません。
ニーチェはサロメにふられた後、たった10日で「ツァウストラはかく語りき」を書いたのですが、その辺は全く映画には出てきません。


同性愛、退廃、狂気、ナチズムというのは『夏の嵐』でもカヴァーニが描きましたが、ナチズムのグロテスクを強調してみせたヴィスコンティに対し、リリアーナ・カヴァーニは、日本のボーイズラブコミックと底辺では通じ合う(コミックと一緒にするなと怒られそうですけど)、女性の男性に対する妙な幻想を感じてしまいます。
女性は、プラトニックな何かをそこに見出そうとしてませんか?

この映画を観ていて、途中からルーは主役ではない、パウル・レーが主役になっている気がしました。

死んだパウル・レーに「自分は女になりたかった」なんてセリフを吐かせるとは。
つまり、ルーは精神的には男だったといいたいのでしょうか?同性愛の趣向をもつ男性たちが男性ではなく、女の表面をしたその下には男以上の男だったルーに惚れたのですね、きっと。

ルー・サロメ 善悪の彼岸 ノーカット版公式サイト http://www.lou-salome.com/index.htm
2月18日より新宿K'sシネマほかロードショー
posted by マヤ at 22:37| Comment(9) | TrackBack(7) | イタリア映画レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
マヤさん、TB&コメント有り難う御座います!
お礼にTB&コメント返しに伺いました。
文章が下手で、実はイタリア映画にはあまり詳しくない俺ですが、今後とも宜しくお願い致します!
Posted by 井川広太郎 at 2006年02月12日 23:34
井川さま、コメントありがとうございます。またそちらにも伺います。よろしくお願いします!
Posted by マヤ at 2006年02月14日 09:45
主演の3人に魅力が乏しく、説得力に欠けました。過激な性描写には辟易、音楽に救われました。Tbしつれいしますね。
Posted by あん at 2006年02月25日 10:16
あんさん、コメントありがとうございます。
あれで30年前の映画ですから、その当時はもっと衝撃的だったでしょうね。でも、必然性が・・・わかんなかったですよね。
Posted by マヤ at 2006年02月27日 16:02
マヤさん、はじめまして。TB有難うございました。イタリア映画はビスコンティからはまり、大好きです。また遊びにきますのでよろしくお願いします。
Posted by キュブ零 at 2006年03月15日 23:44
キュブ零さま
TB&コメントありがとうございます。これから古い映画の記事もたくさんUPしていきたいと思ってますのでまた遊びにきてください〜
Posted by マヤ at 2006年03月16日 23:18
ニーチェが狂気に至ったのは、映画の中でも描かれていますが、梅毒によって脳がおかされたことによるのです。ニーチェが娼館に案内される回想シーンが出てきたはずですが、そこで彼は梅毒に感染してしまったのです。自分が遅かれ早かれ、それによって破滅する運命であることをニーチェは自覚しており、それがさまざまな行動の原因となっています。
Posted by みやかわたけし at 2006年03月25日 09:32
みやかわさま、コメントありがとうございます。謎が解けました。そうだったのですか、、、。途中意識が朦朧としていたのかもしれません。
ルーとは「聖なる三位一体」と称して肉体関係をむすばなかったのに、そんなところで病気に感染するとは皮肉なものですね。
Posted by マヤ at 2006年03月27日 21:36
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Posted by 通販 腕時計 at 2013年07月30日 15:51
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