2006年05月23日

『明日、生まれ変わる』

『明日、生まれ変わる』(Nati due volte)
ジュゼッペ・ポンティッシャ著

映画『家の鍵』の原作です
公式サイト:http://www.zaziefilms.com/ienokagi/
ブログ過去記事はこちら:
http://myvoyagetoitaly.seesaa.net/article/8744420.html


いくつもの人生を想像することはできる。
だが、この人生を放棄することは、できない



最近、こういう純文学を読んでいなかったせいか、久々に心に沁みる作品をじっくり味わえて、読書の楽しみ、喜びを喚起させてくれる作品だった。
読み終わった後しばらく、静かに余韻に浸れたし、考えさせられること、自分の個人的な思い出が記憶のかなたから甦ってきた。この本は、雑音のない静かな場所で読みたい本です。
そして、翻訳がとても素晴らしかったと思います。簡潔で読みやすい日本語でした。

映画『家の鍵』の原作ですが、あまりに小説と映画が違うことに驚き、それと同時に、この小説をああやって脚色するのか、という脚色の仕事の見事さにも感服いたしました。
『家の鍵』は、小説と同時に読むとさらに感動が深まる作品です。
あらためて映画の完成度の高さを、周囲に広めたくなってしまった。

原作では@妻も健在で、ジャンニは教師をしており、夫婦と息子2人(パオロには兄がいる)、家族で暮らしている。Aパオロが生まれて大きくなるまでのエピソードが綴られている。Bジャンニは不倫している。それを妻が感づいるらしい。妻のショックから、パオロは障害をもつことになってしまったのではないか?という秘密が明かされる。これはパオロに対し、家族に対し、ジャンニが罪の意識をずっともちつづけるという非常にキリスト教的な設定だなあと思った。

映画をご覧になった方はわかると思いますが、この原作を、妻を捨てた男が、ドイツのリハビリ施設で、初めて大きくなった息子と対面するという設定に変えたのです。
それによって映画では濃密な父親と子供の空間を作り出すことに成功している。そして父親とは、父親になることはどういうことかの葛藤に、焦点がしっかり絞られているのです。
小説では生まれてから、ずっと一緒に暮らしていてもずっと迷い、悩み続けている父親なのですが。

さて、ここからは非常に個人的なことを。
私は学生時代に障害をもつ友人と旅行をしたことがあります。そのときのことを思い出してしまった。その人は自分のことはなんでも自分でやる、私以上にアクティブで有能で、社交的な人でした。楽しい旅でしたが、あるときはうんざりし、あるときはこちらも助けられ、そして私は、障害をもつ人と「たまにしか一緒にいない自分」を思い、「生まれてからずっと一緒にいるその人の家族」について考えていました。その人と旅に出て、そこでいろんな人と出会い、その人と初めて出会う旅先の人々がその人に対して何を話しかけ、どういう行動をとるか、そしてその光景を傍らから冷めた目で観察していた自分。
そして、その旅行の後、しばらくその人と疎遠になってしまったのだっけ。

自分の人生を通り過ぎるだけ人と、向き合っていかなければいけない人。

もし自分が彼女だったら、もしあのときあの人と出会っていたら、もし出会わなかったら、もし違う国に生まれていたら、もし、もし、もし・・・


この本のタイトル、なぜ「今日、生まれ変わる」にしなかったのだろう。
「明日」というのは、もしかしてとんでもなく絶望的な意味をもつかもしれない。明日のことなど誰にもわからない。
絶望と、同時に希望をどうしようもなく求める気持ちが、「明日」という言葉に込められているのではないか。

この本を読んでよかったです。








posted by マヤ at 14:43| Comment(3) | TrackBack(0) | イタリアを知るための本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
随分映画と違うようで驚きましたが、かえって読んでみたくなりました。ご紹介ありがとう御座います!
ところで、7月に念願のイタリア旅行に行く事になりました。4都市周遊のたった一週間のツアーでほんのさわりだけですけど・・汗;
こちらでまた色々お勉強させて頂きますね(^^)/
Posted by マダムS at 2006年05月27日 07:01
マダムSさま
私のひとりごとのような感想にコメントありがとうございます。
amazonのレビューではイマイチだったとありましたね。おそらく個人的に映画と共通する体験をしているか、否かで感動が違ってくるのだと思います。

さて、イタリア旅行されるのですね!
いいなあーー。「たった」一週間なんて・・・、私からすると一週間「も」ですよ。うらやましい〜。今から楽しみですねー。私も行きたいなあ。
Posted by マヤ at 2006年05月29日 17:18
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Posted by at 2009年06月03日 07:15
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