2005年06月22日

首相暗殺―赤い旅団のテロルと闘った男の壮絶な日々 ロバート・カッツ著 集英社

この本をなぜ読んだかというと、イタリア映画(『夜よ、こんにちは』『輝ける青春』)にこの事件のことがでてきたからである。
モロ首相誘拐・暗殺事件がどういう社会的背景のもとに、誰によって引き起こされたかを知らないと映画も理解できないと思って読んでみた。

1978年3月16日。キリスト教民主党総裁アルド・モロが誘拐された。彼は戦後5度も首相を経験したイタリア政界のドンと呼ばれる大物。
いつもどおり仕事に出かけるためローマの自宅を護送車に乗って出た後、人目につかない路地で別の車から降りた4人の男が銃を乱射。
護衛の5人はすべて射殺され、モロは別の車に押し込まれ誘拐された。犯人はモロにはケガひとつ負わせていない。
その後「赤い旅団」を名乗るグループから犯行声明が出され、政府にトリノで拘留中の仲間の釈放を要求してきたが、時のアンドレオッティ首相率いる政府が犯人グループとの取引を拒絶、55日間の監禁・尋問の後、モロは遺体となって発見された。
この事件の真犯人はいまだ逮捕されていない。(複数犯人のうち何人かは拘束されている模様)

「赤い旅団」はトリノに本拠をおいた極左団体。1970年代初期から活動を開始したイタリアの極左テロリスト組織。司法官、警察、ジャーナリスト、実業家、政治家など要人を誘拐・殺害した。1978年には、アルド・モロ キリスト教民主党党首を誘拐し殺害した。

誘拐されたその日は、ヨーロッパ初の共産党が政権に入ったキリスト教民主党と共産党の連立与党政権誕生が正式発表されるという記念すべき日、その日に悲劇はおこった。

特にユーロコミュニズムの先頭を行ったイタリアでの共産党の躍進は、西側諸国を脅かす勢いがあり、このことにアメリカが危惧を抱いていたという視点からアメリカ陰謀説など現在にいたるまでさまざまな憶測が流れている。ソ連が崩壊後は歴史的事実として振り返っていられるが、70年代の米ソ対立は世界に深刻な影を落としていたし、西側諸国で共産党が与党政権に組み込まれることは脅威であった。
といっても、モロのとった共産党を含んだ連立与党政権樹立は、共産党が政権をとることを阻止するための苦肉の策であったのだが。

この事件の対応を一手にになったのは当時の首相ジュリオ・アンドレオッティ。
事件後、モロにかわってイタリア政界のドンとして君臨した人物である。

赤い旅団からの再三の取引を、イタリア政府は一切拒否した。
一国の首相が誘拐されたら、表向きはテロには屈せずとはいっても、裏では状況に応じてあらゆる取引するのが政治というものだろう。
この本を読んで驚いたのは、一国政権党の総裁の命がかかっているのに、犯人側と交渉「すら」しなかった、という驚愕の事実である。
笑い話のようだが、犯人の手がかりがつかめないため、霊能者に占ってもらい、そこに警察隊が突入するということまでやっていながら、犯人の足跡すらつかめなかった。つかもうとしていたのかすら、怪しい。
交渉するうちに犯人像が少し見えてきそうな気もするが、交渉すらしてない中、雲をつかむような捜査しかできなかったというわけだ。
はじめから、モロを見殺しにするべく決まっていたかのような決着。

イタリア政府は、ブライアン・ジェンキンスというテロ問題の世界的な専門家にではなく、アメリカ国務省から秘密裏に派遣された国務省次官補スティーブ・ピーチェニックに対応のアドバイスを仰いでいたという。「無行動の戦略」と呼ばれた、つまり何もしないことが、ピーチェニックの協力によりたてられた戦略であり、カーター大統領からそれを支持する声明が再三出されたことにも触れている。アルド・モロはアメリカに見捨てられた首相だったのか。

その後アンドレオッティがイタリア政界のドンとして長く権力の場に居座り続けたことは、アメリカとの蜜月のゆえなのかとかんぐりたくもなる。
翻ってわが日本だって・・・などと考え始めると・・・。

国のために尽くしてきた一人の男を見殺しにするような政府の動きに、モロの家族は反発、死後一切の政府による追悼を拒んだのも納得できる。

この本では、赤い旅団側は、首相と旅団の服役囚1人の1対1の交換しか要求していなかったということだ。しかも旅団側の1名とは、重大犯罪者ではなく、解放しても旅団側に全く役にたたない、病人であった、というのにである。それなのに、その要求に応じなかったのはなぜななのか。

またなにより、赤い旅団はいまだに暗殺事件をおこしているのである。(1988年に壊滅したと思われていたが、1999年バッソリーノ労働大臣顧問のマッシモ・ダントーナローマ大学教授が暗殺され、「赤い旅団」名の28ページにわたる犯行声明が出された。イタリアon lineよりhttp://homepage3.nifty.com/bologna/index.html

この事件を知るための本が日本であまり出版されていない中では、この本は入門書としてお薦めできます。


posted by マヤ at 15:03| Comment(2) | TrackBack(0) | イタリアを知るための本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
イタリア赤軍が逮捕され、なんとイタリア軍特殊部隊員とマフィアのメンバーの存在が解りました。外側の名称は「イタリア赤軍」中身は軍特殊部隊・やマフィア・・・第二次大戦中ムッソリーニに対抗し米政府はCIAなどとイタリア移民を情報機関に取り入れ反ムッソリーニ抵抗戦線にイタリアマフィアを利用してきた歴史的繋がりがあります。日本でも昨今、千葉動労委員長・革マル派委員長山崎某は国鉄解体に賛成し・国鉄幹部とゴルフ会等が暴露され、極左革マル派は公安と繋がり指示を受け他セクト集団の情報で行動していたことが暴露されています、この戦術は世界各地で応用され、とくに高度な心理戦で歴史を変える力を彼らは知っています!
Posted by 南一輝 at 2015年07月10日 13:24
イタリア赤軍が逮捕され、なんとイタリア軍特殊部隊員とマフィアのメンバーの存在が解りました。外側の名称は「イタリア赤軍」中身は軍特殊部隊・やマフィア・・・第二次大戦中ムッソリーニに対抗し米政府はCIAなどとイタリア移民を情報機関に取り入れ反ムッソリーニ抵抗戦線にイタリアマフィアを利用してきた歴史的繋がりがあります。日本でも昨今、千葉動労委員長・革マル派委員長は国鉄解体に賛成し・国鉄幹部とゴルフ会等が暴露され、極左革マル派は公安と繋がり指示を受け他セクト集団の情報で行動していたことが暴露されています、この戦術は世界各地で応用され、沖縄ひめゆり事件・聯合赤軍事件・よど号事件。オウム事件とくに高度な心理戦で歴史を変える力を彼らは知っています!特に9・11事件が象徴的です!
Posted by 南一輝 at 2015年07月10日 13:34
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