2005年08月28日

ママは負けない Mi piace lavorare

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『ママは負けない』
2004年/89分/監督:フランチェスカ・コメンチーニ (Francesca Comencini)


[あらすじ]
幼い娘をもつシングルマザーが職場で突然リストラされる。会社が国際的な多国籍企業に買収されたのだ。コピー係、タイプ係、倉庫の管理と職場をたらいまわしにされ、同僚からは裏切られ、精神的に追い詰められていく。  

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[レビュー]
非常にみていてつらい映画だった。リストラされて追い詰められていく様子が痛々しい。母を演じるニコレッタ・ブラスキはロベルト・ベニーニ(『ライフ・イズ・ビューティフル』)の奥さんだが、本作は非常に好演である。この奥さん、イタリア人にしては珍しく「泣き顔」だなあ。あまり笑った表情を他の映画でもみないし、さみしい顔をしている、そういう彼女のキャラクターを見抜いて本作に起用したフランチェスカ・コメンチーニの目のつけどころが鋭い。
理解できないシーンもあって、書類を捜しに行き、ある証拠をみつけてそれを提出し、難を逃れるというあのシーンの意味がよくわからなかった。
娘の存在が唯一の救いである。親が苦労しているのをわかっている娘は決して母親を攻めない。けなげさが泣かせますね。
ラストはまあ救いがあるが、実際救われていない人々がイタリアにどれだけいるのだろう。そして我が日本にもどれくらい・・・と考えると本作がいくら希望をあたえてくれても、スクリーンの中だけだろうと全然気分が晴れなかった。
ちなみに、国際企業に買収されて職場が効率重視になるというグローバリゼイションの波はヨーロッパに吹き荒れており、富の格差を生んでいる
ドイツ映画「ベルリン、僕らの天使」という映画にもこの格差に不平等感をつのらせる若者像を描いている。
2005年5月末にフランスがEU憲法批准を拒み、オランダも国民投票で同じ結果がでた。それはこういう波が押し寄せてくる事に、一般市民が反対していることを表す結果だ。こういう視点から本作をみると、日本もこの例外ではないと強く感じる。

私の採点:★★★

イタリア版DVDパッケージ
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2005年07月26日

愛の果てへの旅 Le conseguenze dell’amore

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愛の果てへの旅

監督&脚本:パオロ・ソレンティーノPaolo Sorrentino
キャスト:トニー・セルヴィッロ Toni Servillo
     オリヴィエ・マニャーニ Olivia Magnani
     アドリアーノ・ジャンニーニ Adriano Giannini
2004年 100分

[あらすじ]
スイスのホテルで一人優雅に暮らしているティッタ・ディ・ジローラモ。彼は定期的にスーツケースに札束を詰め込んで銀行を訪れる。それ以外には何をしているかわからない謎の男。ある日、孤独に耐えかねた彼はホテルのバーで働く美しいウェイトレスに愛を告白する。一体なぜ彼はそのような暮らしをするようになったのか・・・。綿密に組み立てられた脚本、スタイリッシュな映像から目が離せない。

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怪しさ全開の写真

[レビュー]
2004年度イタリア映画界最高の賞、ダヴィオ・デ・ドラテッロ賞主要部門を独占した話題作。日本でもキネティックが配給し、おそらく来年2006年に公開予定。
ついに、イタリア映画にも新世代が登場したとワクワクしてくる作品である。
監督は1970年生まれですから。

冒頭、スカイウォークにのって、キャリーバックをもった男が近づいてくる。この間、1カットのロングショット。自分たちとは遠いところの話が、だんだん観ている私たち観客の中に近づいてきて、入りこんでくる。
この映画は途中までほとんど話が進行しない、ように見える。実はそう見えるだけで、観終わってから気がつくが、どのシーンも実はラストに明らかにされる結末へむけて巧妙に仕掛けが張り巡らされている。ラストに一気に動くストーリーの導入が3/4を占めるというべきか。

ちょっと退屈してしまいそうな展開をつなぐのが、登場人物たちの謎めいた行動であり、その描き方である。

極端にセリフを省くことによって、謎が謎を呼ぶ。ホテル住まいをしている一人の男の様子を追いかけていく過程で、その家族、バーで働く若い娘や、ポーカーを楽しむ老夫婦、お金を預けに行く銀行の行員が登場する。彼らがモザイクのかけらだとすると、ばらばらのかけらが、最後に組み立てられてひとつの画が完成する。

そして、出来上がった画は、静止画ではなく、命が吹き込まれて動き出す。そして最後の最後にはまたばらばらのかけらになって散らかってしまう。そんな順序で物語は進む。

ワケわかんないでしょうが、観ればわかります。

サスペンスでありながら、中年男の悲哀も浮かび上がらせる人間ドラマの側面もあり、乾いたユーモアもちりばめられている。そして全編スタイリッシュな映像で貫く感性も抜群。
ひとことでジャンル分けできない映画なのだ。

この映画はアートだろうか?違う。計算しつくした物語展開で、ラストに観客を驚かすプロットが見事で、今までのイタリア映画では観たことがないような気がする。子供のころからアメリカ映画を見て育った世代。娯楽と芸術の両立を当たり前のように見てきたアメリカンカルチャー世代の香りがするのだ。

気になったところといえば、若い娘に恋心を抱くという設定が、安易だったのではないか。また、その若い娘のとった行動と結果が、随分とセンチメンタルな展開だった。男を映画のラストの行動に走らせる動機づけを何にするか?逆算して考えると、彼女をああするしかなかったのか、という予想できる展開が唯一物足りなかった。

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イタリアの名女優アンナ・マニャーニの孫、オリヴィエ・マニャーニ

この監督は要注目である。

[採点]★★★★
 
[Award]
2004カンヌ映画祭コンペティションノミネート
2004 イタリア David di Donatello賞 
主演男優賞、作品賞、監督賞、撮影賞、脚本賞5部門受賞


[関連サイト]
「Le conseguenze dell’amore」公式サイト(イタリア語)予告編もあります
http://www.medusa.it/leconseguenzedellamore/
posted by マヤ at 23:27| Comment(0) | TrackBack(0) | イタリア映画祭2005 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年07月18日

私のことを覚えていて Ricordati di me

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私のことを覚えていて Ricordati di me

監督:ガブリエレ・ムッチーノ(Gabriele Muccino)

[あらすじ]   
現代ローマの中流より上の家庭の物語。父親はかつての恋人に再会して愛が再燃。家庭を捨てて恋におぼれてしまい、母親はそれを必死に食い止めようとする。兄は恋にもオクテな素朴な青年。妹は娘は上昇志向が強く有名になるために手段を選ばない野心家と、4人の家族模様を執拗に描写し、現代イタリア家族の崩壊を描く問題作。

[レビュー]
父親役のファブリツィオ・ベンティヴォッリョは、イタリアイチの伊達男だそうで、不倫のお相手がモニカ・ベルッチ。美しい。とはいえ、かなり照明でお肌をカバーしているようにもみえたが、彼女が相手で、もうお父さん全く何も見えなくなっちゃってます。
ムッチーノ監督の演出は「けれんみたっぷり」で、パーティ、ゲイが集まるクラブ、タレントオーディション、TV業界の裏側、母親のヒステリーなど、テンションが高い人のオンパレードです。

とくに父親と娘の暴走はすさまじく、お互い勝手なことをしているから、父親は娘を注意できない。この映画では家族を元に戻そうとするのは母親だけだ。普通なら一番傷つくのは子どもたちだと思うが、子どもたちすら、自分のことばかり考えて、親には口を出さない。

妻がふと漏らした一言「浮気をしたこともあったが、あまりにあぶなっかしい。帰るところがある、よりどころがあるという家族も悪くないと思った」というただそれだけのことしか、家族をつなぎとめるものはないのだろうか。

モニカ・ベルッチが演じた女性も夫と可愛い子供がいながら、家族を捨ててしまった。「愛に生きる」ことに寛容なイタリアだから、今はその選択が当たり前のことなのだろうか。

それとも、この映画はイタリアでもかなり論議を呼んで、賛否両論だったそうだから、イタリアの現状を知らないからなんともいえない。

私が一番面白かったのは、娘の恐ろしいまでの上昇志向である。サッカー好きならイタリア人のサッカー選手がTV番組で踊るダンサーたちと浮名を流しているニュースは一度ならず、「何度も」聞いたことがあると思う。(トッティの奥さんだって、ヴィエリの元GFだってダンサー出身)美しければとりあえず芸がなくてもTVに出演できて有名になれる。ダンサーといっても、バラエティ番組で余興のごとく踊ったりするのでダンサーというだけ。フリップをもってアシスタントをしたり、CFはこちらといってみたり、ただのお飾りみたいなもんです。

私のことを1.jpgこういう人たち

そのダンサーにあこがれるんだなあ、イタリアの若い子達は。しかもまあ、18歳なのに、この成熟ぶり!ニコレッタ・ロマノフが熱演してます。

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イタリア映画祭舞台挨拶で、ロマノフは、これが最初に撮影したシーンと話していた。
「一番最初に一番ハードな撮影だったので、後は楽に感じられた」とも。

彼女たちの最高のゴールが美貌を売り物にしてセレブと結婚すること、というなんとも保守的で短絡的な生き方を痛烈に批判してみせる。私はただ、そのあまりの自我の強さに恐れ入ったし、ダンサーたちの裏事情が、かなり誇張されているのだろうが、興味深かった。

イタリアサッカーゴシップが好きな方、おすすめ。

私の採点:★★★


[関連サイト]
Kodakサイトニュースリリースより
posted by マヤ at 21:49| Comment(13) | TrackBack(3) | イタリア映画祭2005 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年07月06日

私をここから連れ出して Prendimi (e portami via)

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2004年 95分 監督:トニーノ・ザンガルディ

[あらすじ]
ローマ郊外に立ち並ぶ高層団地の近くにロマが住み着き、住民との間に生まれる様々な軋轢が生まれる。

[レビュー]
私がローマに旅行したときガイドさんが口をすっぱくして言ってた言葉「ジプシーに気をつけてください」を思い出した。なんと同じツアーに参加していた男性が危うくバックをひったくられる所だったのだ。
しかも一見弱そうな女性ではなく、初老の男性を狙ったところが意外であった。彼らは日本人観光客を毎日観察して知っているのだろう。若い子はお金がない。海外旅行慣れしているオバサマもガードが固い。そう、自分は大丈夫だろうとタカをくくっている男を狙え!と。
そのときその男性は、周囲の女性たちに助けられ、バックをひったくられずに済んだのだが、ジプシーに対していい印象をもてなかったのは事実である。

イタリアではジプシーとは言わない。彼らが自らをロマと呼んでいるとの説や、彼らの言語ロマニー語からロマと言われるようになったなど諸説あり。
ジプシーは彼らがエジプトから来たと言ったことから、エジプシャンが訛ってジプシーになったらしい。

バックひったくられた場面に遭遇した実体験もあり、ローマにロマの人々がいるという話にはすんなり入っていくことが出来た。そして共存するのはやはり大変だろうなあと正直思う。映画で描かれるように、ロマの人々は「溶けこまない」のだ。これだけ自分達の殻に引きこもっている人たちも珍しい。実はナチスドイツはロマも虐殺しているらしいが、ユダヤ人と違って経済力も、それに裏打ちされた政治的権力もなにも持っていないため、賠償も受けていないのだ。
この映画に出てくる話はそれこそ昔からヨーロッパでは少なからずおこってきた事件だと思う。共存することできないけれど、あえて排除もしないという現状も理解できる。なぜなら国家側が手をさしのべても、彼らがそれに入ってこないというロマ側の問題もあるからだ。
この映画でイタリア人の男の子と、ロマの可愛い女の子という設定にしたのはあまりにロマンチックというべきだろう。
男の子は可愛い女の子のために人肌脱ぐ優しさをもっており、これが子供でも打算的な女の子だったら、ロマの少年のためにここまで尽くすか甚だ疑問だからである。ゆえにこの映画も展開が読めてしまって「現状は変わらない」(それは両親側も)というのがこの映画のストーリーの根幹なら、ある意味でリアリズムな王道イタリア映画であった。

唯一リアリズムでないとすれば、主演のヴァレリア・ゴリーノが美人過ぎたことか・・・

採点:★★
posted by マヤ at 10:38| Comment(0) | TrackBack(0) | イタリア映画祭2005 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年06月28日

「アガタと嵐」Agata e la tempesta

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「アガタと嵐」
2004年/118分/監督:シルヴィオ・ソルディーニ(Silvio Soldini)

[あらすじ]
ジェノヴァで書店を経営する40代の女性アガタ。客の若い男性に求愛され、初めは拒否するも次第に打ち解けていく。ある日、アガタの前に弟と名乗る見知らぬ男が現れる。2000年ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞9部門を受賞した「ベニスで恋して」のシルヴィオ・ソルディーニ監督最新作。

[レビュー]
「ベニス・・・」の主演リーチャ・マリエッタをはじめとするスタッフが再結集。一見軽やかだが、後味は少し異なる作品になっている。

うーむ、中途半端な作品だと思った。主役のリーチャ・マリエッタの設定がまず一般の日本人にはわかりにくい。44歳、本屋を経営。お客の難しい注文にもさっと答える知的な女性?ということらしい。美しいことは美しいが、もぉ、典型的なイタリアンマダムだよ。はっきりいってオバチャン。二の腕がタプタプして厚化粧(でも胸の谷間はチャームポイントとしてしっかりアピール)、日本人が似合わない、ぼってり重たいゴールドのアクセサリーつけてるよ。それでもって随分と素敵な男に勤務中言い寄られてるじゃん。その割りに下着姿になると、生活に疲れてますって出ちゃってるんだが、、、、。どうやら前の結婚でできた娘もいるらしい。もう結婚はコリゴリってか、恋に臆病なだけかという恋愛ものかと思いきや、話は突然現れた腹違いの弟の登場で予期せぬ展開に。

テンポがないんだよねえ。しかもアガタが結局何を悩み、何をしたかったのか最後までわからなかった。

実はこの映画の後に、「ベニスで恋して」を見てあまりに面白いんで同じ監督と思えず逆にびっくりしてしまった。

しかもラストの陳腐な諺どうよ。
「虎穴に入らずんば虎子を得ず」って日本語をリーチャ・マリエッタが言うんだよ。観客びっくり、引いてました。私も引きました。
どうやらこれが映画のテーマでもあるらしいんだが。。

監督はとっても優しそうな人で、グルーチョ・マルクスに似てました。

[採点]★
(スミマセン・・・)
posted by マヤ at 17:09| Comment(2) | TrackBack(0) | イタリア映画祭2005 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年06月26日

真夜中を過ぎて Dopo mezzanotte(トリノ、24時からの恋人たち)

『トリノ、24時からの恋人たち』のタイトルで2006年秋、公開決定!

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監督:ダヴィデ・フェラーリオ  
2004年ベルリン国際映画祭で批評家賞など受賞。

[あらすじ]
トリノ映画博物館で働く映画大好き青年でシャイなマルティーノ(ジョルジョ・パゾッティ)のもとに、バイト先のボスにケガをさせてしまったアマンダが逃げ込んでくる。彼女にはアンジェロという恋人がいるのだが、マルティーノと過ごすうち徐々に彼に惹かれていき・・・ 。

[レビュー]
ダヴィデ・フェラーリオ監督は本作でトリュフォーの再来と評価されたそうです。
トリュフォーの『突然、炎のごとく』へのオマージュみたいな映画。
この映画のトリノはいいですね。トリノといえばフィアット!そしてユーベですよ!。

さて、この映画を気に入る人はフランス映画好きな人です。
「三角関係」。うぇーーー。
私の苦手とする分野。
そして何よりフランス映画が苦手。

これといって深い話ではなく、トリノの街が魅力的に描かれ、そこで生活する普通の3人の若者(アンジェロは車泥棒だから普通ではないか)の恋愛模様がキレのあと映像で展開する。なんとなく落ち着いたしっとりした雰囲気があります。
3人の間に小ざかしいかけひきは存在せず、友達と恋人の境界も白黒はっきりつけない、モラトリアムな男2人と女1人。(・・・苦手)

男は正反対のキャラクターで、お互いが持ってないものをもっているがゆえに、女はどっちにも好意をもつ。(・・・苦手)イタリア映画にはつきものの家族もここには出てこない。そういった意味ではイタリアらしくない映画といえる。が、そういうことこそ、イタリアをステレオタイプに見ている証拠であって、こういう話イタリアでもありか、と軽く見ればそれでよいのだ。日本にだってあるだろうし。
本作はイタリアで若者中心に大ヒットしたというから、まあ、日本で木更津キャッツアイがヒットしたのと似てるのかな。(全然違うか・・・)。

採点:★★(人によってはもっとよい評価でしょう。私が苦手なだけです)
posted by マヤ at 21:09| Comment(4) | TrackBack(10) | イタリア映画祭2005 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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